
2004年製作
製作国:ドイツ・オーストリア・イタリア合作
ジャンル:歴史
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
脚本:ベルント・アイヒンガー
【自己評価(10点満点中)】
★★★★★★★★★☆(9点)
主要キャスト
・ブルーノ・ガンツ(アドルフ・ヒトラー)
・アレクサンドラ・マリア・ララ(トラウドゥル・フンプス)
・ユリアーネ・ケーラー(エヴァ・ブラウン)
・トーマス・クレッチマン(ヘルマン・フェーゲライン)
・ウルリッヒ・マテス(ヨーゼフ・ゲッベルス)
・クリスチャン・ベルケル(エルンスト=ギュンター・シェンク)
・ミヒャエル・メンドル(ヘルムート・ヴァイトリング)
・ウルリッヒ・ネーテン(ハインリッヒ・ヒムラー)
・ハイノ・フェルヒ(アルベルト・シュペーア)
・マティアス・グネーディンガー(ヘルマン・ゲーリング)
あらすじ
1942年11月、トラウドゥル・フンプスは、東プロイセンにある総統大本営「狼の巣」にてドイツ総統アドルフ・ヒトラーの秘書採用試験を受け、無事合格する。
それから約2年半後の1945年4月20日、ナチス・ドイツはソ連軍の猛攻により崩壊寸前となっていた。
ソ連軍は首都ベルリンの数キロ先に迫り、もはやドイツ軍にソ連軍を押し戻す力は残っていなかった。
ヒトラーは既に首相官邸の地下壕に退去しており、国家元帥ゲーリングや親衛隊長官ヒムラーなどの最高幹部達がベルリン脱出を進言するも、ヒトラー本人はそれを頑なに拒否。
その後の作戦会議上で将軍達からこれ以上の攻撃は不可能である事を指摘されたヒトラーは激怒し、その場にいた幹部達を痛烈に罵倒する。
既に正常な判断能力を失い、実現不可能な作戦ばかりを語るヒトラーの姿に幹部達は絶望。次々と降伏や逃亡を企てる中、トラウドゥルら秘書達は、ヒトラーから退避指示を受けるもそれを拒み、地下壕に残ることを決意する。
感想
ナチス支配下のドイツで、ヒトラーの秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲ氏(劇中の呼び方は旧姓であるフンプス)の証言を基に、ドイツ第三帝国崩壊を描いた歴史大作です。
側に仕えていた人物の証言であるため、実際のヒトラーの最期を忠実に描いているものと思われます。
邦題タイトルにもある通り、一応はアドルフ・ヒトラーが主役なのですが、ヒトラー個人は勿論、彼を取り巻く様々な人物が、国家の崩壊という異常事態に対しどのように行動したのかを淡々と描いているような感じでした。
目の前のソ連軍を相手に必死に戦う者。降伏のための準備に奔走する者。地下壕でただ怯える者など…。
中には現実逃避のために酒浸りになる者まで、追い詰められた人々の取る行動とは、実に多種多様です。
肝心のヒトラーは既に正常な思考力を失っており、地図上にしか存在しない軍を頼りに無謀な作戦を指示し、意見する部下を激しく罵倒。
しかも、敵であるソ連軍はもう目と鼻の先であり、もはや逃げる事すらできない。
このように、国家崩壊寸前の絶望的な状況が観ているこちら側にこれでもかと伝わってきます。
そして、本作の一番の見所は、主演であるブルーノ・ガンツ氏の演技です。
我々が知っているヒトラーと言えば、壇上にて激しい身振り手振りで力強く演説する姿が思い浮かびますが、この映画で描かれているヒトラーにはもうその面影はなく、ただの弱々しい老人のような有様です。
そして、突然狂ったかのように部下を怒鳴りつけたかと思えば、電池が切れたかのように塞ぎ込む。しかし、女性や子供に対しては「早く逃げなさい」と優しく接するという、ヒトラーの様々な一面を見事に表現していました。
なお、その他に個人的に注目したのは以下の二つのシーン。
1つ目は、徹底抗戦を止めなければ市民の犠牲が増えるという意見に対し、ゲッベルスが「我々は強制はしていない。それを選んだのは彼等であり、自業自得だ!」と言ってのけるシーンです。
確かに、ナチス政権は独裁色が極めて強かったとはいえ、それを民主的に選んだのは他でもないドイツ国民です。
我々も肝に銘じなければいけませんね。選んだ政権によっては、こういう結末もあり得るという事です。
そして2つ目は、秘書であったユンゲ氏による最後のインタビューシーンです。
「私が秘書になったのと同じ頃、私と同い年で、ナチスの危険性を訴えて処刑された女性がいた事を戦後に知った」というもの。
いわゆる「白バラ抵抗運動」の主要メンバーであるゾフィー・ショル氏の事ですね。
(「白バラの祈り」という映画にもなっています)
ただ、1942年時点では、ドイツの勢力は絶頂期なあり、ユンゲ氏のような一般の女性では、その危険性まで読み取る事は難しかったのではないでしょうか。
とは言え、既にナチスの本性を見抜いていた人物も少なからずいたという事です。
1つ目の話にも繋がりますが、やはり国の行く末を決めるのは他でもない国民自身であり、その選択を間違えると、場合によってはこの映画のような結末にもなりかねない。そんな事をまざまざと見せつけられた映画でした。
